Acoustic Guitar | Martin 000-28, 1945
1945年のマーチン000-28の裏板が一部壊れてなくなってしまったものである。
ヴィンテージギターの修理のなかでもっとも難しい要素は木でも塗料でもない。それは時間である。木も塗料も時とともにその様相を変えて行き、人間はそれをコントロールすることはできない。機械やハイテックを使って <らしく> はできるが、時間を操作できないかぎり修理というものは決して完全にはできない。<時の経過>、それはヴィンテージギターを修理する者にとって一番の悩みの種である。この修理ではチョットおもしろいテクニックを紹介しよう。
典型的なブラジリアンの木目であるが、ローズウッドは光や酸素などの色々な要素によって、時間が経つと色が明るくなってくる。しかしそれも表面だけで、軽くサンディングしてやるとすぐに元の濃い肌が出てくるので新しい木を埋めて修理をする場合、色合わせが非常に難しくなるわけだ。我々は修理不可能なギターなどは、万が一のときのために大事に取っておいて、古くなった木を古い塗装の付いたまま使うのである。ブラジリアンローズウッドを使ったギターならなおさらだ。
今回はショップの片隅でホコリをかぶっていたワッシュボーンが大活躍した。先ず本体のなくなったところをノミなどを使ってきれいに整えて接着ラインがなるべく黒い木目のところにくるようにする。つぎににその型を正確にトレースする。私はギターをそのまま複写機に乗せてコピーをとるというテクニックをよく使う。
トレースした型をワッシュボーンの裏板に置いて木目の一番合うところを選ぶ。それを型どおりに切り取って埋め込むわけだ。
ワシュボーンを使ったのはたまたま同年代で色も塗装の感じもよく似ていたからだが、ここで大事なことは塗装を剥がさずに埋め込むというところだ。埋め込むときはその部品が裏板のレベルより高くならないように気をつけなければいけない。なぜなら、サンディングによって古い塗装が剥がれてしまってはなんにもならないからである。
実をいうと、裏板とのジョイント部分でどうしてもフラットにならないところがあって、サンドペーパーがあたり塗装がとれてしまったため、そこだけ色が濃くなってしまっている。だが全体としてみるとたいして気にならない。