Electric Guitar | Fender Telecaster
フェンダーのメイプルネックはフレットを打ち込んだあとでウレタン塗装をかけて仕上げてあるのだが、特に70年代のものは塗装が厚く、フレットの半分近くが埋まってしまっている。そのためフレットが減ったり擦り合わせ修理をしたりすると、フレットが低すぎてとても弾きづらくなってしまう。また、フレットを打ち換えるときにはその都度塗装をし直さなければならない。時間も手間も費用もかかり地球環境にもよくない。
我々は先にネックに塗装をしてからフレットを打ち直すことでその問題を解決してきた。
まずフレットを抜き取り、フレット溝を、木、またはパテのようなもので埋めてから指板のカーブやアールを調整したあと塗装をして仕上げるのだ。フレット溝を埋めないで塗装をすると、溝の淵のところにうまく塗料がのらないため、仕上がりが悪くなる。
塗装の種類に関しては好みの問題で、ウレタンやエポキシのような耐久力のある塗装を好む人もいるし、すぐに変色したり擦り減ってしまうような古いタイプのラッカーを好む人もいる。どちらが良いかは一概にはいえない問題である。どちらにしても塗装をしたあとは、適当な深さに溝を切り直し、フレッ トを打ち込むときに塗装が欠けないように溝の淵にヤスリをかけておく。
さきに塗装を済ませてからフレットを打ち込んで仕上げれば、見た目もきれいだし、フレットも十分な高さを確保できる。何よりもつぎのフレット打ち換えがずっと楽になる、ということは、持ち主にとってもリペアーマンにとってもありがたい。
このギターの場合はネック全体にアンバーカラーがかかっていたので、フレットを完全に仕上げてから新しくやり直したフレットボードにも色をかけてやらなければならなかった。
この色合わせもフレット打ち換えの前にする場合と後にする場合とがあるが、それぞれの持ち主の要望に合わせて臨機応変に対応している。フレット打ち換え後に色をかける場合は、塗膜を薄くしてやればあまり問題はない。だがその場合は、フレットにかかった塗膜は丁寧に取りのぞいておいたほうがよい。