Acoustic Guitar | Martin D-45, 1939
ヴィンテージギターとして価値のあるギター、あるいは一般市場で高価なギターが本来の意味で名器であるか?というと、必ずしもそうではない。
このヴィンテージギターの表面版はブックマッチの際に左右の木目が平行になっていなかったので、収縮の力がある一点にかかり過ぎた結果このような割れ方になってしまったのだろう。どんなに素材が良くても製作の過程で少しでも気を抜くと名器とはならなくなってしまうのだ。
このギターの場合は保存状態があまり良くなかったことも手伝って、あちこちに数カ所のクラックがあった。その内の半分程はブックマッチのつなぎ目に起こったものだ。そこで、そのクラックの部分をまとめて新しいスプルースに換えてしまおうというわけだ。
予め作っておいたテンプレイトを使って取り替える部分を木目に沿って切り取ると、細長いイチョウの葉っぱのような形になる。
これと同じカーブの木目を持つ材を選びブックマッチにして切り取ったところにはめ込むのだが、はめ込む方のスプルースは先に塗装をして周りの木目と調子が合うかどうか確かめておかなければならない。接着してから塗装して木目のムードが違っていてもやり直すことができないからである。
使えそうな木が選べたらブックマッチにして接着し、そこからアクリル板で作ったテンプレイトを使って正確に整形していく。
部品ができたら裏側をけずって厚さをトップと同じになるように調整する。細い方からはめ込み、最後にクサビをうちこむように少し押してやるとピッタリと嵌まるというわけだ。
はめ込む部品には、先に塗装をして、色もある程度合わせてあるので、上にかける塗装は最小限ですむ。センター以外のクラックはほかのヴィンテージギターからの移植で修理した。これは修理をしたあとの写真だが写真(2)とくらべてみるとどこにクラックがあったかが分かるはずだ。
ここにも二カ所クラックがあったのだが、このクラックは移植によって修理をした。
移植によって修理をする利点は、塗装も木もすでにヴィンテージであるので修理後のムードが変わらないというところだ。もちろんこの移植に使った木は同年代ギターの表面版からのものである。クラックのあったところはどこか探してみて下さい。
さて、これでトップにあったクラックは皆どこかへいってしまいました。