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  ギブソン社の作り出したもっともポピュラーなフルアコースキック・エレクトリックギター ES175だ。

このヘッドとネックの付け根のところはギターの中では最も弱い部分で、特にマホガニーの場合は見えないところまで複雑にひびの入ることが多い。そうなると すべてのクラック奥深くまで接着剤を浸透させることが難しく、中途半端な接着では信頼できる強度が出せない。60〜70年代にノースアメリカでこの手の修 理にはロッドの両側に補強材をいれたものや、グラスファイバーで外側を固めたもの、ひどいケースではボルトや木ネジで締めつけたりしたものなどがあるが、 どれも醜く不完全である。驚くことに、そうした信じられない修理のほとんどはプロといわれる人達によってなされたもので、ギターに対する、又は持ち主に対 する愛情がまったく感じられない。

このケースは、外から見ただけでもいかにも複雑な割れ方をしている。これでは接着剤をクラックの隅々にまで注入させることは不可能なので割れた部分を新しく取り替えることにした。



  復元修理は各部の正確な採寸と、ヘッドの角度、形、各部の曲線、ネックの形などのテンプレイトの作成から始まる。それが終わると思いきって ヘッドを切り落とす。長い間、物を治すことばかりやって来た者にとって <壊す> という作業は例えそれが必要なことであっても何か罪悪感を感じるものである。しかし、こうしてヘッドをノコギリで切り落とす時などはドキドキ、ワクワク、 とても複雑な気持ちだ。





  このネックはワンピースであるがヘッドは両翼に補強と化粧、経済性などを考慮してまっすぐな木目のマホガニーが加えられている。そこで新しい部分はその両翼を残して真ん中だけを取り替えることにしたのだが、シリアルナンバーがあるためヘッドの半分だけを取り除いた。

挿入部分は接着面がどれも皆それぞれの角度を持っており、トラスロッドの溝、ナットの穴なども微妙な角度で構成されている。したがってニューセクションの整形はとても神経を使う仕事だ。

接着の際に各部がずれないようにするためにダボと呼ばれる木製の嵌め釘を使うのが普通だが、この場合は第一フレットの位置に2本、トラスロッドカバーのネジ穴を利用して1本、計3本使ってある。




  左 : 整形をする前の挿入部分を裏から見たもの。
右 : 整形をしたあとの写真。

マホガニーの種類が違うため、色も杢のムードも違うが、これくらいだとオリジナルの塗装が濃いため、塗装技術でカバーの出できる範囲である

  塗装後パーツを付けて弦を張れば修理完了。持ち主がやって来る。一生懸命壊れた所を探すが見つからない。

こちらは踊り出したい気持ちを押さえて、涼しい顔をして笑っていればいいというわけだ。

 

 

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